【原作未読】映画『この世界の片隅に』感想をこのネット世界の片隅で
原作未読。
「なんか地味そうだし退屈しそうだけど評判良さげだし、勤労感謝の日で休みだし見ようかな」程度のノリでアニメ映画『この世界の片隅に』を観てきた。
ごめんなさい、めちゃくちゃ良かったです。
勤労感謝の日に感謝。
なんというか、こう、いろんな感情がこみ上げた。
主人公すずさんたちに感情移入して、観ているこちらもたくさんの気持ちがあふれた。
笑ったり、泣いたり、怒ったり、それでもひたむきに生きていこうという気持ちになったり。
なにより嬉しくなった。
『君の名は。』や『聲の形』など今年はアニメ映画が豊作の年。
それでまだこんな良い作品を観ることができて嬉しくなった。
というわけでそんな良い意味で裏切られまくった『この世界の片隅に』の感想をネタバレしないように書いていきます。
- どんな映画?ざっくりあらすじ
- 地味そうだし退屈するんじゃないの?→そんなことなかった
- かわいい娘とか出ないんじゃないの?→そんなことなかった
- のんさんの演技ヒドいんじゃないの?→そんなことなかった
- 舞台が戦時中なら重いんじゃないの?→そんなことあったりなかったり
- おわりに
どんな映画?ざっくりあらすじ
時は1944年、場所は広島。
絵が得意でのんびりとした性格の少女・浦野すずは広島市江波に住む18歳。
そんな彼女のもとに突然縁談がもちあがり、呉市へ嫁ぐことに。
見知らぬ土地で妻となったすずさんの日常も、日々激しさを増していく空襲に壊されていく。
そして、昭和20年の夏がやってくる──。
うん、やっぱ地味だ。
あらすじだけ見るととても食指が動かない。
でも観てほしい。
なんならいっそそのハードルを下げた状態でいいから観てほしい。
観終わったあとはきっと違う感想になっているから
地味そうだし退屈するんじゃないの?→そんなことなかった
何も起こらない日常シーンが続いたりするんであれば退屈しそうだなと思っていた。
TVシリーズの日常アニメであればそんなことはないけれど、映画だと結構つらいかもと。
ただそんな思いは杞憂だった。
まずテンポが良い。
さくさく時が過ぎてくし、ころころ場面転換していく。
あと、感情がとても揺さぶられる。
退屈するかどうかという意味ではここが重要だと思うがこの作品では、
笑ったり、泣いたり、怒ったり、いろいろな感情が湧き上がる。
作品中の人たちがそうであるように、観ていて感情移入しているこちら側も、強く、感情が揺さぶられる。
(c)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
笑いの一翼を担っているのが天然ボケ要素満載の言動を起こす、主人公すずさん。
その実直さに、緊張感あるはずの場面でも思わず笑ってしまう。いいキャラしてる。
戦時中を描いた作品ということもありテーマとしては重そうなんだけど、
この柔らかく温かみのある絵と、時折はさまれる笑いがそれを緩和してくれてとてもバランスが良かった。
あと、涙が自然と出た。
アニメ観て泣くとか『ARIA』のアリシアさん引退セレモニー以来だったから自分でびっくりしたね。
涙が頬を伝ってびっくりしたね。
悲し涙だったり、嬉し涙だったり、この作品ではたくさん感情動かされるシーンがあって、
いろんなシーンを思い出しながらブログ書いている今も気を抜くと涙が出そうになる。
いやぁ、だってあのシーンは反則というか、そのあとのあのシーンも・・・って感じです。
まとめると、退屈どころか、エンドロールが流れる頃にはもう終わりかぁと思ったぐらい短く感じた
かわいい娘とか出ないんじゃないの?→そんなことなかった
CMだけ見てると絵の感じとか地味めな雰囲気も合わさってこういうこともちょっと思っていた。ちょっとだけ。
でもそんなことなかった。
なんといっても主人公すずさんの表情の豊かさがとても良い。
><みたいなデフォルメされた表情もよくするし、(ノ∀`)アチャーみたいな顔もよくする。
性格とか諸々あいまって、なんだか『スケッチブック』の主人公・空を彷彿とさせるようなゆるさがあった
(c)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
のんさんの演技ヒドいんじゃないの?→そんなことなかった
不安はあった。
声優じゃない人の起用否定派とまではいかないけど、ヒドい棒だったりするとそれだけで残念な感じになったりするので。
ただこれも杞憂だった。
声優演技っぽくない独特な感じがすごくマッチしていた。
声もこれじゃないといけない感すら出ている。
おそらく深夜アニメなんかでこの声で出てこられると作品によっては「ん?」となりかねないんだけど、
本作においてはこの声が自然、超自然。
普段はぼうっとしているというすずさんのキャラだからこそというのもあるんだけど、
そのすずさんが感情を露わにする場面でも崩れてなくて凄いと思った。
普段の声は良くても叫ぶシーンとかになると「あれ?」ってなる人は多いので(声優もだけど)、
その違和感を感じさせないこの人天才かな?って思った
(c)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
舞台が戦時中なら重いんじゃないの?→そんなことあったりなかったり
テーマがテーマだけに重いシーンもある。
だからこそ日常がより愛おしく感じられる。
この対比が作品内で入り混じっているので、重いといえばそうだし、
ただ「重い作品か?」と言われるとそれは否定したくなる。
作品を通して感じたのは、
「それでも前向きにたくましく生きていこうという力強さ」
であり、見終わった後はある種の晴れやかな気持ちがあった
おわりに
あまり触れなかったけど、音もすごいこだわってる感が伝わってきた。
立川の極上音響上映で見たいというのもわかる。
原作力あっての良さだと思うけど、それに映像美や音響、演技なども合わさって凄い良い作品だった。
観てない人はぜひ観てほしい。
この素晴らしい映画に祝福を
原作も気になったので読もうと思う
なんとなく思い出したゆるやかな4コマ漫画『スケッチブック』