はいもしもし儚き命です!

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主に感想・考察・レビューを綴る徒然なる雑記

【書評】『君の名は。 Another Side:Earthbound』で君の名は世界の深み増した感想

 興行収入が物凄い勢いで伸び続けているアニメ映画『君の名は。』

そのアナザーストーリーという位置付けの小説『君の名は。 Another Side:Earthbound』が良かったので感想書いてく。

本書のネタバレは避けるけど、本編である映画および小説『君の名は。』のネタバレは挟まるので、未見の人は是非本編を先に観ることをおすすめする。

 

本の内容は?

君の名は。 Another Side:Earthbound (角川スニーカー文庫)

君の名は。 Another Side:Earthbound (角川スニーカー文庫)

 ↑が本書の表紙。

映画観た人ならわかると思うが、前にいるのがヒロインの三葉。

そして後ろにいる4人、入れ替わり相手の瀧くん、三葉の友人テッシー、三葉の妹四葉、三葉の父であり糸守町の町長の宮水俊樹。

この後ろの4人それぞれの視点(瀧くんは三葉入れ替わり時の視点)で、本編で描かれていなかった裏側が語られている。

以下がその目次。

第一話 ブラジャーに関する一考察

第二話 スクラップ・アンド・ビルド

第三話 アースバウンド

第四話 あなたが結んだもの

 

第一話 ブラジャーに関する一考察

 三葉入れ替わり時の瀧くんこと立花瀧視点。

身体的な違いや生活環境の違いに苦労したり楽しんだりしている瀧くん視点で語られるお話。

基本的にはギャグパートという感じで、映画で感じた以上に瀧くんはバカ(男子高校生らしいという意味で)なんだなと感じることができる。

一方で、三葉に対する周りの人の反応などを見て、(出会ったことはないけれどメモアプリなどでのやり取りで)自分が知っている三葉とのギャップに興味を持ち始め、真面目に考える一面も見られる。

真面目にということでサブタイトルについてもじっくり考察している。

後、ラノベなので時折挿し絵が入ってるんだけど、この第一話の最後の挿し絵の表情が絶妙。

映画でも盛り込まれいるシリアスな中にある笑いが集約されたような一枚。

 

第二話 スクラップ・アンド・ビルド

 勅使河原建設社長の息子であるテッシーこと勅使河原克彦視点。

これは第一話以外の本書全てに言えることなんだけど、入れ替わった二人以外の一人称視点で三葉が語られているのが面白いところ。

映画であれば入れ替わったどちらかの一人称視点か、あるいは映画を観る第三者の観客視点しかないけれど、本書ではこの世界の住人視点で語られる。

で、この第二話。

入れ替わっているなんてことを知らないテッシーの反応としては「時折奇行を起こすようになった友人」を割と本気で心配する。

この、人が変わったような(実際中身は変わっている)三葉を見て、また自身の境遇や糸守町の未来についてテッシーの思い・考えが綴られる。

本編では三葉の企みに勢いであっさりと乗っかったようにも見えたけど、これを読んでただのオカルト好きなムー信者じゃなかったんだと改めた。

 

第三話 アースバウンド

 三葉の妹でしっかり者の小学4年生、宮水四葉視点。

映画で見ていてもしっかりしてるなーという感じだったが、一人称視点で語られるこの第三話でより一層その思いは強くなる。

しかし同時に小学生らしいと感じる一面も垣間見ることができて二度美味しい。

四葉視点では、三葉の奇行はある種の恐怖を感じるもので少し距離を置きつつも、探り探り理解しようと歩み寄っていくさまが面白い。

そんなほんわかギャグパート多めではあるが、中盤辺りの少し空気感が変わっての展開も引き込まれるものがありとても良かった。

 

第四話 あなたが結んだもの

 三葉の父であり糸守町の町長、宮水俊樹視点。

三葉(中身は瀧くん)にネクタイを掴まれ捩じ上げられているところから始まるこの第四話は他の三話と違い、俊樹の回想が話の主軸となっている。

回想では一葉の娘であり三葉・四葉の母である二葉との出会いから現在に至るまでが語られている。

本編では何かわかんねぇけど手のひらクルーってしたように見えた町長も、この第四話読み終えた後は、うおおおおお町長おおおお二葉さあああんってなる。

第四話読む前は「第四話が最後で町長の話ってことは、サヤちんとかの話無いのかぁ残念だなぁ」とか思いつつだったけど、読後感はこの話最後に持ってきた構成素晴らしいっていう綺麗な締めでとてもとても良かった。

 

全体を通しての感想

 映画の出来は今更言うまでも無い。

映像の美しさから音楽、ストーリー、テンポの良さ、笑いあり感動ありで兎に角素晴らしい。

しいて良くない点を挙げるとするなら、映画では削られた結果説明が足りなくなった部分。(個人的には語らない美学というか、テンポ優先してもらった方が好みなので悪い点とは感じなかったけど)

ただ、そこを補う意味でこの外伝小説の出来はとても良かった。

映画同様ギャグの空気感も持ち合わせつつ、描ききれなかった部分が補完される、アナザーストーリーとしてあるべき姿と思える作品。

そしてもう一度映画が観たくなる作品。

欲を言えば、三葉視点や瀧くんサイドの面々の視点も観たくなった。

もっともっと世界を掘り下げてほしくなった。

 

終わりに

 映画『君の名は。』を観たのは公開二日目の8月27日で、あれから一ヶ月以上経っている。

観たときは万人受けしそうだし伸びてほしいなという感想だったけど、こんなに伸びるとは予想外だった。

アニメ好きとしてはこうやって普段アニメ観ない人たちにも浸透して業界が活性化するのはとても嬉しい。

 1つだけ心配ごとを上げるとするなら、本作『君の名は。」が新海誠監督の最高傑作となったのは間違いないけれど、次回作はどうなるのかということ。

すれ違わせたら天才と思わせられてきたが、今回最後の最後ですれ違ってきたけどすれ違わないという、今までためてきたものが放出された。

そこにやられたと思ったし完敗だと思ったけど、じゃあ次回作はという点が気がかりではある。

新味を見せてくれるのかどうなるのかはわからないけど、期待半分不安半分で楽しみに待つ。

新味誠つって

君の名は。 Another Side:Earthbound (角川スニーカー文庫)

君の名は。 Another Side:Earthbound (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 加納新太,田中将賀,朝日川日和,「君の名は。」製作委員会,新海誠
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/07/30
  • メディア: 文庫
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